2024年10月19日、ペンシルベニア州ラトローブでの選挙集会で、鉄鋼労働者から贈られたハードハットをかぶるドナルド・トランプ大統領。 (Win McNamee/Getty Images)
近年の歴代大統領には、名声を確固たるものにする功績を残す機会が減っている。しかし、ドナルド・トランプ大統領は2期目の最初の100日間で、日本製鉄によるUSスチール買収を承認することで、この10年間で最も重要な経済的決断を下す機会を得ている。
米鉄鋼業は14万人以上を直接雇用し、非常に多様な製品に使用されているため、製造業、建設業、中小企業を問わず200万人以上の雇用に影響を与えている。 重要な産業をアウトソーシングすることへの懸念は軽んじられるべきものではなく、トランプ大統領が選挙戦で、日本を拠点とする買い手がこのような象徴的で重要な米国企業を買収することに深刻な懸念を表明したのも不思議ではない。
同時に、トランプの主要な解決策のひとつである関税は、中小企業や消費者にさらなる痛みをもたらす可能性がある。筆者は自由市場を信奉するエコノミストで、大統領が2月11日発表した25%の鉄鋼輸入関税は支持しない。利幅の狭い中小企業はすでにインフレの逼迫を感じており、顧客価格を引き上げず原材料費の大幅な上昇を吸収する規模はない。
消費者も鉄鋼関税の影響に気づくはずだ。特に、住宅や食料品など鉄鋼を多く使用し、すでにインフレで大きな打撃を受けている業界では。 アンダーソン・エコノミック・グループの分析によれば、新車価格が12,000ドルも上昇する可能性がある。 全体として、トランプ大統領が選挙運動で掲げた関税をすべて実施した場合、中流家庭に年間1,700ドルの負担増となる可能性がある。
しかし、大統領就任以来、トランプは関税を単なる武器として使ってきたわけではない。むしろ、強硬な交渉スタイルが、この協定を承認し、年間数十億ドルの国内鉄鋼生産を関税から守る一方で、他国で行われる生産に打撃を与える機会を作り出したのだ。 これにより、何千もの雇用が国内で維持され、消費者へのインフレ圧力が軽減され、苦境にある地域社会への経済投資が改善される。
トランプ大統領が就任するずっと前に、日鉄は国内鉄鋼会社の入札額をはるかに上回る150億ドル近い買収額を提示した。同社はまた、U.S.スチールのモン・バレー工場の更新に10億ドル、インディアナ州ゲーリー工場の炉の刷新に3億ドルを約束した。
これらは、合併が消費者、労働者、地域社会にどのような利益をもたらすかを示す出発点にすぎない。インフラや技術への投資だけでなく、日本は合併完了時に労働者一人当たり5,000ドルを支払うと約束している。つまり、ラストベルトで何千もの雇用が失われる可能性がある代わりに、勤勉な家庭は短期的な現金と長期的な雇用の安定を手にすることになる。
この買収を承認することは、トランプ大統領の政治的利益だけでなく、何百万人ものアメリカ人の経済的利益にもなることは明らかだ。 というのも、買収を承認することで、トランプ大統領は比較的低い政治的・経済的コストで関税の一部を実施することができるからだ。
トランプは2期3回の選挙戦を通じ、従来の共和党支持層の経済的自由主義、低税率の立場と、保護関税を求めるポピュリストの訴えのバランスをとってきた。世論調査によれば、中小企業経営者は、トランプが民主党から引き抜いたブルーカラーや中流階級の有権者とともに、トランプをホワイトハウスに返り咲かせるのに貢献した連合の重要な一部だった事が判明している。
日鉄との取引は、トランプがこれらの有権者の声をはっきりと聞いたことを示す機会である。 何十億もの新規投資、何千もの安定した雇用、消費者や中小企業にとっての価格競争の緩和は、大統領なら誰でも達成したいと願うような永続的なインパクトになる。■
この記事はRealClearMarketsに掲載されたものです。
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Commentary
Nippon Steel Could Be a Shining Legacy for Donald Trump
Mike Feuz | March 13, 2025
https://www.dailysignal.com/2025/03/13/nippon-steel-could-be-a-shining-legacy-for-donald-trump/
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